パイプラインカバレッジとは?必要な倍率を受注率から逆算し、区分と時期で割り引いて判断する
パイプラインカバレッジは残り目標に対する期内の案件の倍率で、必要な倍率は一律の3倍ではなく1÷期内受注率で決まります。この記事で、区分と時期で割り引いて足りるかを判定し、打ち手を選べるようになります。
パイプラインカバレッジとは:残り目標に対する期内の案件の倍率
パイプラインカバレッジとは、期内に想定クローズ日がある進行中の案件の金額が、残り目標の何倍あるかを示す倍率のことです。
パイプラインカバレッジ = 期内の進行中の案件の金額 ÷ (期の目標 − 受注済み)
分子は案件の金額そのもの。加重金額は使わない目標に届くかを、期末より前に判断するための数字です。 数える範囲は、次の3つで決めます。
- 分母は残り目標:目標全体で割ると、受注が進むほど分子だけが減り、順調な期ほど倍率が下がって見えます。
- 分子は期内の案件だけ:想定クローズ日がその期に入るパイプラインを数えます。日付の無い案件は、どの期にも入れません。
- 進行中の案件だけ:失注・保留の案件は外します。受注済みは分母の側で引いているので、分子には入れません。
測るのは週に1回、同じ曜日にして、期初の値と並べます。 受注が進むと分母の残り目標が減るので、案件が増えていなくても倍率は上がります。 倍率が動いたら、分子と分母のどちらが動いたのかを分けて読みます。
必要な倍率の決め方:「3倍」ではなく自社の期内受注率から逆算する
必要な倍率は1 ÷ 期内受注率で決まり、「3倍」が当てはまるのは期内受注率がおよそ33%の会社だけです。
必要な倍率 = 1 ÷ 期内受注率
必要パイプライン = 残り目標 × 必要な倍率期内受注率とは、ある時点で期内に日付があった案件の金額のうち、その期のうちに受注になった割合です。 3倍は目安として語られることがありますが、自社の率と合っているかは確かめられていません。 率が違えば、同じ3倍でも足りる会社と足りない会社に分かれます。
| 期内受注率 | 必要な倍率 | 「3倍」で判断すると |
|---|---|---|
| 50% | 2.0倍 | 足りているのに案件づくりを求め、前倒しに使う時間を削る |
| 約33% | 3.0倍 | ちょうど当てはまる |
| 25% | 4.0倍 | 期内の見込みは残り目標の75%にとどまる |
| 20% | 5.0倍 | 期内の見込みは残り目標の60%にとどまる |
ふつうの受注率を使うと、倍率を低く見積もる
受注 ÷(受注+失注)で出す受注率は、翌期へ後ろ倒しになった案件を数えません。 期内受注率では、後ろ倒しも「期内に取れなかった金額」として分母に残ります。 そのためたいてい受注率より低くなり、必要な倍率は上がります。
期の途中は、同じ時点の率で測り直す
期初の率を期の半ばに使うと合いません。残り日数が短いほど、前段の案件は期内に閉じにくくなるからです。 過去4期ほどの「同じ週の時点」の率を、金額の合計どうしで割って出します。
ステージの構成で期内の見込みを出す計算例は、パイプライン管理の指標で扱っています。
カバレッジの計算例:3.0倍でも、率・区分・日付の3つで点検すると足りない
3倍あっても安心せず、自社の率で出した必要な倍率、区分の倍率、日付の根拠の3つで点検します。
カバレッジが測るのは量だけです。案件の確かさは予測区分で、時期の確かさは想定クローズ日の根拠で見ます。コミットは、決裁者の合意・予算・発注の手続き・日付の4つが先方の事実で裏づけられた案件です。
例四半期の5週目に、カバレッジ3.0倍のチームを点検する
四半期の目標は3,000万円、受注済みは600万円で、残り目標は2,400万円です。 期内の進行中の案件は7,200万円あり、カバレッジは3.0倍です。
- 量:過去4期の5週目時点の期内受注率は25%でした。必要な倍率は4.0倍、必要パイプラインは9,600万円です。期内の見込みは7,200万円 × 25%=1,800万円で、600万円足りません。
- 区分:コミット800万円とベストケース1,200万円の合計は2,000万円で、残り目標の約0.83倍です。全部が取れても400万円届かず、残りは事実のそろっていない案件に頼ります。
- 時期:パイプライン区分の5,200万円のうち3,600万円は、想定クローズ日が期の最終月です。先方の手続きから引いた日付ではなく、担当者の希望の日付でした。
「3倍あるから大丈夫」は、3つのどれでも成り立ちません。 今週やることは、3,600万円の日付を先方の稟議や発注の日程から引き直すことです。 あわせて着地の見込みを、受注済みと合わせて2,400万円前後と報告します。
数値は説明のための架空のものです。
量が必要な倍率に届かなければ、区分と時期を見るまでもなく不足です。 量が足りても区分の倍率が1倍を切るなら、事実のそろっていない案件に頼っています。 最後に時期を確かめ、日付の根拠が弱い金額を見込みから外して読み直します。
足りないときの打ち手と失敗:生成・前倒し・単価を残り日数で選ぶ
残り日数が商談期間より短いなら、新しい案件づくりは今期ではなく来期の打ち手として数えます。
- 生成:いま作る案件は、商談期間が残り日数に収まるときだけ今期に効きます。例えば残りが6週で、自社の商談期間が90日前後なら、いま作る案件の多くは来期の数字です。不足額から案件数とアポ数へさかのぼるには、営業KPIの逆算を使います。
- 前倒し:翌期に日付がある案件のうち、先方に今期に決める理由がある案件だけを対象にします。こちらの都合の値引きで早めると、翌期の数字を先に食うだけです。
- 単価:期内の案件の範囲(席数や対象の部門)を、先方の課題に沿って広げられないかを確かめます。金額を変えた案件は、区分と日付も確かめ直します。
よくある失敗
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 日付を期内へ動かして倍率を満たす | 足りないと詰められると、案件を増やすより日付を動かすほうが早い | 想定クローズ日は先方の手続きから引く。期内へ移った案件は、動かした根拠を週次で確かめる |
| 期末の月に案件を量産して埋める | 量が足りなければ案件を作る、と一対一で考える | 今期は前倒しと単価で埋め、生成は来期の分として週の目標に置く |
| 終わった案件が残り、倍率が膨らむ | 失注を嫌い、止まった案件を閉じない | 滞留の日数を超えた案件は、週次で継続か失注かを決める |
明日から始めること:カバレッジを判断に使うための5つの点検
まず自社の期内受注率を出し、週次でカバレッジと区分の倍率を並べて見るところから始めます。
- 分母を残り目標(期の目標 − 受注済み)にした
- 想定クローズ日の無い案件と、失注・保留の案件を分子から外した
- 過去4期ほどの実績から、期初と期の半ばの期内受注率を出した
- 週次でカバレッジと、(コミット+ベストケース)÷ 残り目標を並べた
- 期の最終月に日付が集まった案件を、先方の日程から引き直した