パイプライン管理の指標とは?量・質・速度・滞留を並べて、足りないものを見分ける
パイプライン管理の指標は、量(カバレッジ)・質(予測区分の内訳)・速度(転換率)・滞留の4つを並べて見ます。この記事の表と計算例で、どの数字の組み合わせが何の不足を示し、次に何を打つかを決められます。
パイプライン管理の指標とは:量・質・速度・滞留の4つで点検する
パイプライン管理の指標とは、進行中の案件の集まりが目標に足りるかを、期末より前に判断するための数字のことです。フォーキャストは「今期いくらで着地するか」に、この指標は「その材料が今期と来期に足りているか」に答えます。 量・質・速度・滞留の4つの視点で、次のように見ます。
- 量:パイプラインカバレッジ(下の式)と新規の生成額。週次で見ます。
- 質:期内の金額を、コミット・ベストケース・パイプラインの予測区分に分けた内訳。週次で見ます。
- 速度:ステージ間の転換率と商談期間。母数が小さいと週ごとにぶれるので、月次で見ます。
- 滞留:滞留とみなす日数を超えた案件の金額の比率と、期限切れの次のアクション。週次で、担当者は毎日見ます。
パイプラインカバレッジ = 期内の進行中の案件の金額 ÷ (期の目標 − 受注済み)
期内=想定クローズ日がその期に入る案件4つを並べるのは、どの数字も単独ならよく見せられるからです。 量だけなら、止まった案件を消さないだけで金額が膨らみます。 速度だけなら、見込みの薄い案件を登録しないだけで転換率が上がります。
例えばカバレッジが上がった週に滞留の金額も同じだけ増えていれば、増えたのは止まった案件です。 必要な倍率は一律の「3倍」ではなく、自社の期内受注率から逆算します。 手順はパイプラインカバレッジの必要倍率の計算で扱っています。
指標の読み方:数字の組み合わせで、生成・進み方・大きさ・質の不足を分ける
打ち手は1つの数字で決めず、数字の組み合わせから、生成・進み方・大きさ・質のどれが足りないかを先に決めます。足りないものを取り違えると、正しい努力でも数字は動きません。
| 足りないもの | 数字の組み合わせ | 最初の一手 | 今期に効くか |
|---|---|---|---|
| 生成 | カバレッジが必要な倍率を下回り、新規の生成額も減っている | 必要な生成額を逆算し、週に作る案件数に落とす | 商談期間が残りの期間より長ければ、効くのは来期 |
| 進み方 | 量はあるが、特定の段の転換率が下がり、その段の滞留金額が増えている | その段の滞留案件を棚卸しし、日付のある次のアクションか、失注・保留に分ける | 後段の案件なら効く |
| 大きさ | 件数と転換率は保たれているが、受注金額の平均と中央値がそろって下がっている | 提案書を出す前に、対象の範囲と金額の根拠を確かめる | 提案前の案件なら効く |
| 質 | 金額はあるが、コミットとベストケースが増えない | コミットまでに足りない事実が1つだけの案件から、事実を取りに行く | 期内の日付がある案件なら効く |
4つの違いは、手を打ってから効くまでの時間です。 期の半ばに生成が足りないと分かったら、それは今期ではなく来期の不足の知らせです。 今期の不足は、後段の案件の進み方と質で埋めるしかありません。
来期に向けては、必要な生成額を期初から逆算します。
期初までに必要な生成額 = 来期の目標 × 必要な倍率 − すでに来期の日付が付いた案件の金額
これを期初までの週数と、案件を作った時点の平均金額で割り、週に作る件数にする(切り上げ)進み方を転換率で読むときは、同じ時期にその段へ入った案件で束ねて数えます。 分母と起点の決め方は受注率の計算方法で扱っています。
計算例:カバレッジ2.9倍でも、ステージの構成で見ると920万円足りない
前段に偏ったパイプラインは期内に閉じにくいので、期の途中は倍率ではなく、ステージごとの期内受注率で見込みを出します。期の半ばの数字で確かめます。
例期の半ばに、倍率ではなくステージの構成で見込む
四半期の目標が4,000万円、6週目の受注済みが1,200万円で、残り目標は2,800万円とします。 期内のパイプラインは8,000万円なので、カバレッジは約2.9倍です。 ここに、過去の期から出した「期の半ばにその段にいた案件が、期内に受注になった割合」を掛けます。
- 接触:1,500万円 × 2% = 30万円
- アポ:2,500万円 × 8% = 200万円
- 提案済み:3,000万円 × 30% = 900万円
- 口頭合意:1,000万円 × 75% = 750万円
期内の見込みは合計1,880万円で、残り目標に920万円足りません。 この構成で必要な倍率は、8,000万 ÷ 1,880万=約4.3倍です。
ステージの確度(5%・20%・45%・80%)で出した加重金額は2,725万円で、ほぼ届いて見えます。 確度は最終的に受注する見込みで、期内に閉じるかまでは含まないからです。
今期に効くのは、提案済みと口頭合意の4,000万円です。 残り目標はその7割にあたりますが、自社の率どおりなら見込めるのは1,650万円です。 7割を閉じる前提で計画を組まず、着地の見込みを早めに下げて報告し、来期の生成に今週から手を打ちます。
数値は説明のための架空のものです。
期の後半は、(コミット + ベストケース)÷ 残り目標も並べます。 これが1倍を切ったら、上振れがすべて取れても目標に届きません。全体の倍率が高くても、着地の見込みを下げる検討を始めます。
よくある失敗:カバレッジを担当者の評価に使う、など3つ
指標は式よりも運用で崩れ、その多くは、数字を良く見せる動きを誘う使い方から始まります。よくある3つと、その直し方です。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| カバレッジを担当者の評価に使う | 倍率で評価されると、案件を作って消さない動きが出る。倍率は上がるが、中身は止まった案件になる | カバレッジはマネージャーが不足に気づく数字にとどめ、評価は受注と生成の実績で行う |
| 転換率を、その月の件数どうしで割る | 今月の提案と今月のアポは別の案件。案件が増える時期は低く、減る時期は高く出る | 同じ時期にその段へ入った案件で束ね、結果が出てから測る |
| 滞留の線を超えないよう、ステージだけ進める | 滞留日数はステージに入った日から数えるので、進めると0に戻る | 次の段の転換率が急に下がったら疑う。ステージの入口の条件で止める |
滞留案件を棚卸しすると、カバレッジは下がります。下がった分は、もともと無かった数字です。 ここで担当者を責めると、次から止まった案件が消されずに残ります。
線を超えた案件を、動かすか失注・保留にするかの判断は、滞留案件の見つけ方と動かし方で扱っています。
明日から始めること:定義を1枚にし、週次30分で同じ順に点検する
最初から全部の指標をそろえず、定義を文で決めて期初の状態を残し、週次はカバレッジと滞留から見始めます。転換率と必要な倍率は、実績がたまってから置きます。
- カバレッジの分母を残り目標にし、分子は期内の日付がある進行中の案件だけにすると決めた
- 期初と期の半ばのパイプラインを、ステージごとの金額で残し始めた(後からは取り戻せない)
- 週次30分を「カバレッジと区分 → 先週からの増減 → 滞留の棚卸し → 来週の一手を1つ」の順で回すと決めた
- カバレッジを担当者の評価に使わないと決めた
- 確度は受注までの累積の転換率に、滞留の線は受注した案件がその段にいた日数に合わせ、四半期の初めにだけ置き直すと決めた
置き直しを期の途中でしないのは、数字の悪化が「前提の変更」にすり替わり、何が起きたのか読めなくなるからです。