営業ルールはなぜ形骸化するのか:正当な例外だけを1回通す、例外承認の設計
営業ルールが形骸化するのは、守れない正当な場面に逃げ道が無く、形だけ満たす入力に流れるからです。この記事の基準表と計算例で、ルールを緩めずに例外を1回だけ通し、月次で条件を直せるようになります。
営業ルールの形骸化とは:守れない場面に逃げ道が無く、形だけ満たされる状態
営業ルールの形骸化とは、ルールが SFA の設定や資料には残っているのに、現場の判断と記録に効かなくなった状態のことです。必須欄を破る人がいなくても、形だけ満たす入力が増えれば起きます。
- 形だけ満たす:必須欄に「未定」、金額に仮の値を入れて先へ進む。ルールは守られたことになり、記録から事実が消える。
- 裏の表で管理する:本当のヨミを別の表計算で持ち、SFA は会議の前日にだけ合わせる。
- 口頭の「今回だけ」が積み重なる:上長がチャットで認め、翌月には前例として別の案件にも使われる。
根にあるのは、守れない正当な場面に逃げ道が無いこと
例えば、既存顧客の席数追加で、提案書を作らず見積書だけで進む案件があります。「提案書が入力済み」を求めるルールは、この案件では守れません。
正規の逃げ道が無いと、担当者に残るのは、破る・形だけ満たす・外してもらうの3つです。どれを選んでも、ルールは弱くなります。
入力そのものが定着しない場合は、SFA を定着させる方法で扱っています。
例外承認の基準:禁止は2条件を満たすルールだけ、承認は目的で決める
例外を承認するかは、ルールの文言ではなく、ルールの目的が別の事実で確かめられたかで決めます。その前に、どのルールを禁止にするかを絞ります。
禁止にするのは、2つを満たすルールだけ
停止中は判定だけ、警告は知らせたうえで進められ、禁止は満たすまで進めません。例外承認が要るのは禁止だけです。 新しいルールは停止中か警告で数週間回し、満たさない理由を集めてから、次の2つを満たすものだけを禁止にします。
- 破られると予測が崩れる。コミットに入る段の条件のように、判断の土台になる。
- 正当な例外を1〜2文で言える。言えないルールを禁止にすると、承認が人によってぶれる。警告のまま週次で見る。
警告の間に充足率を読む手順は、商談フェーズの移行条件で扱っています。
申請は3つの要素で書かせ、この表で決裁する
理由は「満たせない事実」「代わりに確かめたこと」「満たす見込み」の3つで書いてもらいます。 通す範囲は1案件・1ルール・1回で、使ったその場で効力を消します。 決裁が遅いと担当者は形だけ満たす道へ戻るので、「1営業日以内」のように目安を決めます。
| 申請の中身 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| ルールの目的が、別の事実で確かめられている | 承認 | ルールが守ろうとしたものは守られている |
| 事実はあるが、欄が空いている | 差し戻し。入力を求める | 通すと、入力しない習慣を承認することになる |
| 事実がまだ無い。期末に間に合わせたい | 差し戻し。ステージは据え置き、想定クローズ日を見直す | 通すと、予測に事実の無い金額が入る |
| 理由が「先方都合」「急ぎ」だけ | 差し戻し。3つの要素で書き直してもらう | 判断の材料が無い |
承認を求めるのは先へ進める向きだけにし、予測区分を下げる・日付を後ろへずらす・失注にするは承認なしで通します。 悪い知らせを承認待ちで止めないためです。
計算例:例外率と理由の偏りで、3つのルールの直し方を決める
例外をルールごとに月次で数え、例外率と理由の偏りを並べると、条件を直すのか、人を見るのかが分かれます。
例外率 = 例外で通した件数 ÷ 先へ進んだ件数
ルールごとに月次で数える。分母には、例外で通した件数も含める例禁止にしている3つのルールを、月次で判定する
営業担当12名の組織で、1か月の例外をルールごとに数えたとします(3つとも前月も同じ傾向)。 判定の目安は、例外率が2か月続けて2割を超えたら理由を読み、1つの場面に半分以上が集まれば条件に書き足す、と置きます。 1人の担当者に集まっているなら、先にその人の進め方を見ます。
- 提案済み「提案書 URL が入力済み」:40件中9件(約23%)。9件中7件が既存顧客の追加で、見積書だけで進めていた。→ 条件を「提案書か見積書の URL」に改める。
- 口頭合意「予算が確保済みか申請中」:18件中2件(約11%)。2割に届かず、理由も別々。→ そのまま続ける。
- 口頭合意「決裁者が紐づいている」:18件中5件(約28%)。5件中4件が同じ担当者で、会った決裁者を登録していなかった。→ ルールは続け、その担当者の登録の習慣を見直す。
例外率だけなら3つ目を緩めたくなりますが、原因はルールではなく1人の入力です。 本来は差し戻すべき申請だったので、承認者の判断もあわせて振り返ります。 1つ目は、条件を直せば7件分の例外が要らなくなる見込みです。
数値は説明のための架空のものです。
例外がゼロのときも安心はできません。ルールが実態に合っている場合もあれば、全員が形だけ満たしている場合もあります。 満たした案件を数件抜き取って値の中身を確かめ、強さや条件の変更は期の初めにまとめて入れます。
よくある失敗:口頭の承認、自己承認、「今回だけ」の恒久化
例外承認は入れた直後より回り始めてから崩れ、原因はたいてい記録の残し方と承認する人の置き方にあります。よくある3つと、その直し方です。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 口頭やチャットで承認し、記録に残さない | 手早く済ませたく、承認が案件の記録と結びついていない | 案件とルールに結びついた記録でしか受け付けない。記録に無い例外は月次で数えられず、ルールも直らない |
| 自分の申請を自分で承認する | 承認できる人が1人しかいない。期末の圧力がいちばん強い担当者やプレイングマネージャーが自分で通す | 仕組みで押せなくし、承認できる人を2人以上置く。マネージャーの案件は一つ上の責任者が承認する |
| 「今回だけ」が顧客ごとの恒久的な除外に変わる | 同じ顧客で例外が続き、毎回の申請が手間に見える | 顧客を外さず、その場面を条件の満たし方として書き足す。外した顧客は、決裁者が替わっても誰も戻さない |
自己承認は、承認が無いより悪い記録を残します。後から見た人は「承認済み」を、第三者が確かめた印と受け取るからです。
明日から始めること:禁止のルールを1つ選び、例外の通り道を決める
最初から全部を整えず、禁止にする(または、したい)ルールを1つ選び、例外の通り道と月次の見直しだけを先に決めます。次の5つから始めます。
- ルールごとに、いまの強さ(停止中・警告・禁止)と、その理由を一覧にした
- 禁止にするルールを、破られると予測が崩れ、正当な例外を1〜2文で言えるものに絞った
- 例外は1回限り・1案件・1ルールとし、理由は「満たせない事実・代わりに確かめたこと・満たす見込み」で書くと決めた
- 自分の申請を自分で承認できない形にし、承認できる人を2人以上置いた
- 月次の見直しを予定表に押さえ、ルールごとの例外率と理由の偏りを見ると決めた
1か月後に集まった理由が、次に直す条件を教えてくれます。 ステージの条件と例外の承認の画面は、案件管理の紹介で見られます。