商談フェーズの定義とは?ステージの移行条件を買い手の事実で書く方法と文例
商談フェーズ(ステージ)は買い手の側で起きた事実で定義し、次へ進む条件は記録で確かめられる項目にします。この記事の文例と点検表で、ステージを進めるだけで予測が膨らむ状態を直せます。
商談フェーズの定義とは:ステージを「買い手の事実」で区切ること
商談フェーズ(ステージ)の定義とは、案件の進み具合を、買い手の側で起きた事実で区切ったものです。次へ進む前にそろうべき事実を、記録で確かめられる項目にしたものが移行条件(exit criteria)です。
ステージ = 買い手の側の事実(定義)+ 記録で確かめる項目(移行条件)
定義は1文で、移行条件は項目で書く「提案書を送った」のような売り手の作業で定義すると、先方が資料を開いていなくてもステージは進みます。 確度もコミットの既定もステージに乗っているので、担当者が動くだけで予測が膨らみます。 パイプラインが、買い手の検討ではなく担当者の忙しさを映すようになります。
ステージごとに決めるのは、次の5つです。
- 定義:買い手の側で何が起きているかを1文で書く
- 移行条件:そのステージに入る前に、記録で確かめる項目
- 確度:受注に至る割合の見込み。過去の実績から置き、案件ごとに上書きしない
- 滞留日数:何日止まったら見に行くかの線
- 既定の予測区分:担当者が何もしなければ入る区分
判定の基準は「記録だけで同じステージに置けるか」
- マネージャーが担当者に聞かずに、記録だけで同じステージに置けるか。置けないなら、根拠が担当者の頭の中にあります。
- 先方に聞いたとき、先方も同じ状態だと答えるか。「提案済み」なのに先方が「資料をもらっただけ」と言うなら、定義か運用がずれています。
フェーズとステージは、SFAや会社によって呼び名が違うだけで、ほぼ同じ意味です。 この記事ではステージと書きます。
ステージごとの移行条件の文例:アポ・提案済み・口頭合意
移行条件は、そのステージの買い手の事実を、選択肢・数値・日付・人物の役割で確かめられる形に書きます。自由記述の欄は、埋まっているかどうかしか判定できないからです。
| ステージ | 避ける定義(売り手の作業) | 買い手の事実(定義) | 進む条件(記録で確かめる項目) |
|---|---|---|---|
| アポ | 架電してアポを取った | 先方の担当者が、課題を話す場を日時つきで承諾した | 紐づく人物が1人以上。活動の記録が1件以上 |
| 提案済み | 提案書を送った | 先方が提案と金額を受け取り、社内の検討に入った | 金額。今日以降の想定クローズ日。提案書の所在(URL) |
| 口頭合意 | クロージングをかけた | 決裁者が、条件がそろえば発注すると意思を示した | 役割が決裁者の人物。予算が「確保済み」。決裁の手続きが「不明」以外。最後の活動が14日以内 |
| 受注 | 契約書を送った | 署名済みの契約書か発注書を受け取った | 受け取った日 |
口頭合意の条件は、コミットの定義とそろえる
口頭合意を既定でコミットに置くなら、条件がコミットの定義より緩いと、ステージを進めるだけでコミットが膨らみます。 予算を「確保済み」に絞るのはそのためで、「申請中」はベストケースの水準です。 発注の手続きの日程と日付は項目で確かめにくいので、コミットを裏づける4つの事実と照らして週次で点検します。
推進者が「稟議を上げます」と言った時点は、まだ口頭合意ではありません。 稟議を最後に承認する人の意思を確かめて、初めて口頭合意です。 決裁者と決裁の手続きの見極め方はMEDDICC の使い方を参照してください。
予算や決裁の手続きの選択肢には、必ず「不明」を置きます。 無いと、分からない案件にもそれらしい値が入り、条件が嘘の入力で満たされます。
条件は警告で測ってから禁止へ上げる:充足率の読み方の例
新しい条件は警告で始め、充足率と満たさない理由を読んでから、期の初めに1規則ずつ禁止へ上げます。最初から禁止にすると、担当者はステージを進めなくなるか、条件を満たすためだけの値を入れます。 どちらも、マネージャーからは見えにくい崩れ方です。
充足率は、いまそのステージにある案件のうち、条件を満たす割合です。 満たさない案件は「入力漏れ」「事実が無い」「判断が要る」の3つに分けて読みます。 禁止へ上げる線は、例えば「充足率9割を4週続けて超えたら」のように、割合と期間で先に決めて全員に伝えます。
例警告の4週間で、口頭合意の条件を読む
口頭合意に12件あり、4つの条件を満たすのは7件だったとします(充足率は約58%)。満たさない5件は次のとおりです。
- I社・J社:決裁の手続きが空欄。入力漏れなので、担当者が稟議の流れを入れて満たす
- K社・L社:決裁者が紐づいていない。決裁者と未接触で事実が無いので、提案済みへ戻す
- M社:最後の活動が20日前。取締役会の開催待ちで判断が要る。待つ間も推進者と接点を置き、14日の線は変えない
I社とJ社を埋め、K社とL社を戻すと、口頭合意は10件で、満たすのは9件です(90%)。 M社に接点が入れば、10件すべてが満たします。 戻した2件の分だけコミットは減りますが、減ったのは見かけの数字で、案件の実態は元からこうでした。
数値は説明のための架空のものです。
上げる順番は、破られたときの損が大きい条件からです。既定がコミットになる口頭合意の条件がそれに当たります。
強さを変えるのは期の初めだけにします。期末の直前に動かすと着地会議の数字が一度に動き、条件の効果と案件の変化を区別できません。
移行条件が形骸化する3つの失敗と直し方
移行条件は、空欄の素通り・中身の無い入力・例外の常態化の3つで形骸化します。どれも作った直後ではなく、回り始めてから起きます。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 空欄が「不明以外」を素通りする | 「不明と等しくない」と書くと、空欄は「不明」という値ではないので満たす。いちばん分かっていない案件が楽に通る | 比べる条件はすべて値があることを前提にし、空欄はどの条件も満たさない扱いにする |
| 入力するだけで条件を満たせる | 「提案書のURLがある」はどのURLでも、「人物が1人以上」は受付の人でも満たす。値の有無しか見ていない | 提案済みと口頭合意は人物の役割や予算の状況など中身を見る条件に寄せ、週次に数件を抜き取って確かめる |
| 例外が常態化し、禁止が形だけになる | 止まるたびに「先方都合」で承認している。条件か運用が実態に合っていない | 例外は1回限り・1案件・1規則。規則ごとの件数を月次で数え、続くなら承認を重ねず規則を直す |
申請理由の書かせ方と決裁の基準は営業ルールの例外承認で扱っています。 入ったあとで決裁者が異動するなど事実が消えた案件は、週次で洗い出して戻します。 戻したことを責めると、担当者は戻す代わりに黙ります。
明日から始めること:口頭合意の1ステージから書き直す
全ステージを一度に直さず、既定がコミットになる口頭合意の定義と条件から書き直します。予測の数字にいちばん直接効くのが、このステージだからです。
- 口頭合意の定義を、買い手の側で起きた事実の1文で書いた
- 進む条件を、決裁者・予算・決裁の手続き・直近の活動の4項目に対応させた
- 予算と決裁の手続きの選択肢に「不明」を置き、空欄は満たさない扱いにした
- 条件を警告で入れ、禁止へ上げる線(割合と期間)と、上げる時期(期の初め)を決めた
- 警告のまま進んだ案件と、条件を満たさなくなった案件を週次で確かめる人を決めた
口頭合意が回り始めたら、提案済み、アポの順に広げます。 ステージの列に案件が並ぶボードと条件の設定は、案件管理の紹介で見られます。