決裁者の見つけ方:「決める人・通す人・使う人」を分け、推進者と決裁の道筋を描く
決裁者は、役職から当てるのではなく、決まり方を聞いて推進者と道筋を描くと見つかります。この記事で、5つの役割の見分け方、聞き方の文例、会えないときの判断が分かります。
決裁者の見つけ方とは:「決める人・通す人・使う人」に分けて探すこと
決裁者の見つけ方とは、先方の決裁を「決める人・通す人・使う人」に分け、発注までの道筋として確かめることです。日本企業では、1人に会えば決まる形は多くありません。稟議で複数の部門が承認し、最後に金額に応じた役職が決めます。
使う人の納得 → 通す人の起案と合議 → 決める人の承認
どこか1か所で止まれば、発注はされません。3つの役を誰が担うかを確かめます。- 決める人:その金額について最後に承認し、否と言える人。エコノミックバイヤーとも呼びます。
- 通す人:稟議を起案し、関係する部門に話を通す人。ここが推進者になると案件は進みます。
- 使う人:導入後に毎日使う現場。納得していないと、起案の段で止まります。
肩書がいちばん上の人が、決裁者とは限らない
決める人は、金額の区切りで変わります。見積が区切りを越えると、承認の段が1つ増えます。 役員の決裁でも、実質の判断を起案する部長に任せていることがあります。 逆に部長決裁の金額で役員へ会いに行くと、部長の頭越しになり、起案が止まることがあります。
キーパーソンという言葉は、決裁者を指すことも、推進者を指すこともあります。 言葉のまま記録せず、次の節の5つの役割に分けると、チームの見立てがそろいます。
決裁に関わる5つの役割:役職ではなく、先方の事実で見分ける
役割は役職から推測せず、先方の説明や行動という事実を確かめてから付けます。推測で「決裁者」と書くと、確かめた場合と記録の見た目が同じになります。 マネージャーが案件を点検しても、どちらなのか見抜けません。
| 役割 | 先方での典型 | 付けてよい事実 | 見誤りやすい点 |
|---|---|---|---|
| 決裁者 | 金額に応じた承認者(部門長・役員・会議体) | 「この金額は〇〇の承認」と先方から手続きの説明を受けた | 肩書の高さだけで決める |
| 推進者 | 稟議を起案し、社内を動かす人 | 資料を社内に回す、会議を設けるなど、自分の時間を使って動いた | 好意的なだけの人を推進者にする |
| 実務担当 | 現場で使う人、窓口 | 業務の課題や要件を具体的に話した | 窓口の返事を会社の意思とみなす |
| 影響者 | 情報システム・法務・経理など合議の部門 | 稟議の合議や確認に加わると分かった | 後半で出てきて差し戻す |
| 反対者 | 現状維持を望む人、別の投資を推す人 | 懸念や反対を口にした、または推進者から聞いた | 見ないふりをして放置する |
とくに見誤りやすいのは推進者(チャンピオン)です。 返事が早く感じの良い人でも、社内で動いていなければ実務担当です。 推進者かどうかは、頼みごとをして動いたかで判定します。
反対者は、見つけた時点で価値があります。誰が何を懸念しているかが分かれば、稟議の前に手を打てるからです。
決裁者の聞き方と、推進者に紹介してもらう4つの手順
決裁者には、手続きを聞いて推進者と道筋を描き、会う理由を作ってから会いに行きます。「決裁権はお持ちですか」とは聞きません。 相手の立場を問う質問に聞こえ、稟議で決まる組織では答えにくいからです。
人ではなく、手続きを聞く
「前回、同じくらいの金額のサービスを入れたとき、どなたの承認で、どの順に進みましたか」。前回の実例を聞くと、承認の段が具体的に出てきます。見積の前には「この金額だと、最終的にどなたのご承認になりますか」も聞きます。
推進者になれる人か確かめる
「社内でご説明いただくとき、どなたが懸念を持たれそうですか」と聞きます。次に、社内向け資料の回覧のような小さな頼みごとをします。実際に動いてくれた人が推進者です。
決裁の道筋を1枚に描く
「稟議はどの部門をどの順で回り、決裁の会議はいつですか」と聞き、段ごとの担当と日程を1枚にします。同じ1枚を推進者と持ち、空いている段を一緒に埋めます。
会う理由を作り、推進者から紹介してもらう
推進者にはこう頼みます。「稟議を通すために、〇〇様が重く見る点を直接伺いたいです。導入効果の試算を15分で確かめる場をいただけませんか」。推進者に同席してもらい、推進者の手柄になる形にします。
ほかの要素(予算・判断の基準・課題)を聞く問いは、MEDDICC の使い方にまとめています。
決裁者に会えないときの判断と、よくある3つの失敗
決裁者に会えないうちは案件をコミットに上げず、会えない理由で次の手を分けます。予測区分の基準では、コミットには決裁者本人から導入の意思を聞いたことが要ります。 推進者経由で提案が届いたと確かめただけなら、ほかの事実がそろっていてもベストケースまでです。
- 推進者が必要を感じていない:会う理由が弱いだけです。費用や人員の計画など、決裁者が重く見る点に合わせて理由を作り直します。
- 推進者が会わせられない、会わせたがらない:その人は推進者ではないか、社内で優先度の低い案件です。別の推進者を探します。
次の決裁の会議や予算編成の時期を過ぎても届かないなら、失注にして理由を残します。 保留にするのは、再開の時期か条件を先方から聞けたときだけです。 「決裁者に届かなかった」がたまれば、最初に接点を持つ部門や役職を見直す材料になります。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 会えた人の中で、いちばん上の役職を決裁者にする | 探す手間を省き、会えた人で欄を埋めたくなる | 先方の手続きの説明で確かめるまで、決裁者の役割を付けない |
| 推進者を飛ばして、決裁者へ直接アプローチする | 早く会いたい焦りと、推進者に頼む遠慮 | 推進者の了承と同席で会う。飛ばすと社内の味方を失う |
| 合議の部門(情報システム・法務など)を後回しにする | 決める人と通す人だけを見て、道筋を描いていない | 道筋の1枚に合議の段を入れ、確認の項目と日数を先に聞く |
明日から始めること:口頭合意に近い案件から、決裁の道筋を点検する
まず口頭合意に近い案件から、決裁者と推進者を事実で言えるかを1件ずつ点検します。全件を一度に直す必要はありません。着地に効く案件から始めると、次の会議で差が出ます。
- 各案件で「決める人・通す人・使う人」が誰かを書き出す。分からない欄は推測で埋めない
- 決裁者の役割は、先方の手続きの説明で確かめた人にだけ付ける
- 推進者は、頼みごとをして動いた事実がある人に限る
- 次の商談で「前回はどなたの承認で、どう決まりましたか」を聞く
- 決裁者に会えていない案件は、会う理由と紹介の依頼を次のアクションに置く
役割も分けます。道筋の1枚を作って推進者と埋めるのは営業担当者です。 会えていない案件を週次で並べ、会う理由と期限を問うのはマネージャーです。
決裁者の有無をステージの移行条件にする書き方は、商談フェーズの移行条件で扱っています。 条件を画面で決める作りは、案件と規律の紹介で見られます。