フォーキャストカテゴリとは?コミット・ベストケースを事実で分ける基準と、ヨミとの対応
フォーキャストカテゴリは、案件をコミット・ベストケース・パイプライン・対象外に分ける予測区分で、担当者の自信ではなく先方の事実で決めます。この記事の基準表と計算例で、区分の定義を1枚に書き、着地の下限を読めるようになります。
フォーキャストカテゴリとは:4つの予測区分と、確度との違い
フォーキャストカテゴリ(予測区分)とは、案件を「想定クローズ日に受注できると、どれだけ確かに言えるか」で分ける区分のことです。英語では forecast category と呼ばれ、コミット・ベストケース・パイプライン・対象外の4つを使います。
- コミット:想定クローズ日に取れると約束できる案件。ヨミのランクで管理しているなら、Aヨミを対応させる。
- ベストケース:うまく進めば取れる、上振れの案件。Bヨミを対応させる。
- パイプライン:進行中だが、着地の予測には数えない案件。Cヨミを対応させる。
- 対象外:失注・保留など、予測に一切数えない案件。
どの期に数えるかは、区分ではなく想定クローズ日で決まります。 受注済みの金額は区分に入れず、実績として別に数えます。 今期の着地は、想定クローズ日が今期に入る案件だけで次のように読みます。
着地の下限 = 受注済み + コミット
上振れは「受注済み+コミット+ベストケース」。パイプラインは今期の着地に足さない区分を担当者の自信で決めると、同じ状態の案件でも、楽観的な人はコミットに、慎重な人はパイプラインに入れます。 合計は案件の状態ではなく、担当者の気質の合計になります。 だから区分の条件は、第三者が記録から確かめられる事実で書きます。
ステージの確度(%)から出す加重予測とは、答える問いが違います。 加重予測は「案件を束ねると、平均でどれだけ残るか」に答えます。 区分は「この1件を、その期の数字として約束できるか」に答えます。
1件の結果は、取れるか取れないかの2つしかありません。 だから1件ずつの判断には区分を、全体の見通しには確度を使います。 予測全体の組み立ては営業フォーキャストの立て方で扱っています。
コミットとベストケースの基準:4つの事実の「いちばん弱いもの」で決める
区分は、決裁者の合意・予算・発注の手続き・日付の4つの事実で決め、いちばん弱い事実に合わせます。判定の基準は、マネージャーが担当者に聞かずに、記録だけを見て同じ区分に入れられるかです。 「前向き」「感触が良い」は条件になりません。
| 事実 | コミット | ベストケース | 足りない(パイプライン) |
|---|---|---|---|
| 決裁者の合意 | 決裁者本人から導入の意思を直接聞き、日付と同席者が記録にある | 決裁者を特定し、提案が届いたことを推進者から確認した | 決裁者が誰か分からない、または接点が無い |
| 予算 | 発注に使う予算枠を確保済みで、見積の金額も先方が了承している | 予算の出どころ(どの部門の、どの枠か)が分かり、確保の手続き中 | 未確認、または次の予算編成を待っている |
| 発注の手続き | 稟議・法務・購買の残りの段と日程を、先方と合意している | 誰が何を承認するか、手続きの段を先方から聞き出せている | 手続きが分からない |
| 日付 | 先方の手続きの日程から逆算した日で、先方もその日を認識している | その時期に閉じたい理由が先方にある(現行契約の期限など) | 担当者の希望の日でしかない |
4つは足し算しません。3つがコミットの水準でも、予算だけが未確認ならパイプラインです。 予算の無い案件は、決裁者がどれだけ乗り気でも、その日には発注できないからです。
この4つは、MEDDICC の2つの要素に重なります。Economic Buyer(予算を最終的に決める人)と、Decision Process(決裁の手続き)です。 見極めの枠組みを使っているなら、その記録をそのまま区分の根拠にできます。
区分の既定はステージに持たせ、担当者が選ぶのは例外のときだけにします。 そのうえで、コミットを既定にするステージの入口条件を、上の表のコミットの水準とそろえます。 入口条件の書き方は営業ステージの移行条件で扱っています。
計算例:4件を区分に分けて、目標3,000万円と比べる
区分を事実で付け直すと、担当者がいちばん自信を持つ案件が下限から外れ、次に取りに行く事実が1つに絞れます。四半期の途中の数字で確かめます。
例4件を、いちばん弱い事実で分ける
四半期の目標が3,000万円、受注済みが1,800万円のチームで、期内の案件を4件並べたとします。
- A社(800万円)→ コミット:決裁者の役員から導入の意思を直接聞いた。今期の予算枠を確保し、稟議の日程も合意済み。想定クローズ日は稟議日から逆算した期内の日。
- B社(500万円)→ ベストケース:予算は確保済みで、稟議の日程も合意している。決裁者には推進者経由で提案が届いたが、本人とはまだ話せていない(面談は来週)。
- C社(1,200万円)→ パイプライン:役員と面談済みで、担当者はいちばん自信がある。ただし予算は来期の枠で検討中で、手続きもまだ分からない。
- D社(300万円)→ コミット(翌期):4つともそろうが、稟議が翌期の初月。想定クローズ日も翌期に置く。
今期の下限は1,800万+800万=2,600万円で、目標の約87%です。 ベストケースを含めると2,600万+500万=3,100万円で、目標に届きます。
足りない400万円は、B社をコミットに上げられるかで決まります。 B社に足りないのは決裁者本人の合意だけなので、来週の面談で確かめる事実はそれ1つです。 C社を担当者の自信どおりコミットに入れていれば、下限は3,800万円に見え、B社に手を打つ理由が消えていました。
数値は説明のための架空のものです。
D社のように期をずらすときは、区分を下げずに日付を動かします。 区分は「どれだけ確かか」、想定クローズ日は「いつか」を表す別の軸です。
よくある失敗:コミットが「決意表明」になる、など3つ
区分の運用が崩れる原因は、定義の文面よりも、会議での聞き方とステージとの噛み合わせにあります。よくある3つと、その直し方です。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| コミットが「決意表明」になる | 会議で「この案件、いける?」と意思を問うので、担当者は覚悟を答える | 「決裁者の合意は、いつ、誰から取った?」と事実を問う。答えられなければ区分を下げる |
| 上書きが常態になり、既定の区分が意味を失う | コミットを既定にするステージの入口条件に4つの事実が無く、担当者が毎週手で区分を下げる | 入口条件を4つの事実にそろえる。上書きの件数と率を担当者ごとに毎週見て、下げる上書きが続くなら条件を直す |
| 想定クローズ日が期末に集まり、翌期へずれ続ける | 日付を「取りたい日」で入れ、期をずらすときに区分まで動かす | 日付は先方の手続きから逆算する。期は日付で動かし、区分は事実が変わったときだけ動かす |
明日から始めること:定義を1枚書き、週次で上書きを点検する
最初から完璧な定義は要らないので、4つの事実で定義を1枚書き、2〜3週間回してから直します。次の5つから始めます。
- 4つの区分の定義を、決裁者の合意・予算・発注の手続き・日付の事実で書き、チームに配った
- 区分は「いちばん弱い事実」に合わせる、と明文化した
- ヨミの呼び名を残すなら、Aヨミ=コミットのように対応させ、定義を事実に差し替えた
- 上書き中の案件を週次で並べ、理由の事実がまだ生きているかを確かめる時間を取った
- コミットの先週からの増減を、新規・失注・後ろ倒しなどの理由に分けて見ると決めた(先週からの変化の読み方)
週次の点検は、同じ順番で回します。 まず下限と上振れを目標と比べ、次に上書き中の案件を棚卸しします。 最後に、ベストケースからコミットへ上げる候補と、取りに行く事実とその期限を決めます。
区分が事実で決まっていれば、着地会議は数字を詰める場から、足りない事実を取りに行く段取りを決める場に変わります。 受注済み・コミット・ベストケースを目標と並べる画面は、フォーキャストの紹介で見られます。