営業フォーキャストとは?着地見込みをコミットと加重予測で読み分け、精度を上げる方法
営業フォーキャストとは、今期の売上がどこに着地するかを案件の事実から見積もり、毎週更新する数字です。この記事で、報告に使う数字の決め方と、精度を下げる3つの失敗の直し方が分かります。
営業フォーキャストとは:案件の事実から今期の着地を見積もる数字
営業フォーキャスト(売上予測)とは、その期の売上がどこに着地するかを、進行中の案件の事実から見積もった数字のことです。日本の営業組織では「着地見込み」や「ヨミ」とも呼びます。
予算や目標とは、答える問いが違います。 目標は「いくら達成すべきか」で、期の途中では動かしません。 フォーキャストは「今の案件のままなら、どこに着地するか」で、毎週動きます。
着地は、予測区分ごとの合計で見ます。コミットは、決裁者の合意・予算・発注の手続き・日付の4つが、先方の事実で裏づけられた案件です。 ベストケースは、うまく進めば期内に取れる上振れの案件です。
下限 = 受注済み + コミット
着地の下限。経営へ報告する着地見込みはこの数字上振れ = 下限 + ベストケース
上振れの幅。「うまく進めばここまで」として下限に添える加重予測 = 進行中の案件ごとの(金額 × 確度)の合計
確度はステージごとの受注の見込み。案件ごとに円未満を切り捨てて足すどれも、想定クローズ日(受注を見込む日)がその期に入る案件だけで数えます。 区分に入れる条件の書き方は、フォーキャストカテゴリの決め方で扱っています。
期間は、経営への約束を四半期で、担当者の打ち手を月で追うと扱いやすくなります。 月の単位では1件の比重が大きく、日付が数日ずれるだけで予測が大きく揺れるからです。
コミットと加重予測の使い分け:今期の報告はコミット、見通しと点検は加重予測
今期の着地はコミットで約束し、加重予測は来期以降の見通しと、申告の点検に使います。2つは作り方が違い、答える問いも違います。
| 観点 | 申告予測(コミット) | 加重予測 |
|---|---|---|
| 答える問い | この期に、どの案件を取ると約束できるか | 案件を束ねると、平均でどれだけ残るか |
| 判断が入るところ | 担当者の見立てと、マネージャーの確かめ | 確度の置き方と、ステージの進め方 |
| 強い場面 | 期の後半。大型案件の比重が高い | 案件が多く、1件の金額が全体に比べて小さい |
| 弱い場面 | 担当者が楽観的、または保守的に申告する | 大型案件が少数に集中している。確度が実績とずれている |
| 使い道 | 今期の着地の報告と、打ち手の優先順位 | 来期以降の見通し、パイプラインの厚みの判断、申告の点検 |
加重予測を信じてよいかは、2つで決める
- 最大の1件が、加重予測の何割を占めるか。例えば2割を超えるなら参考にとどめ、その案件を個別に見ます。線は、自社の案件の金額のばらつきに合わせて置きます。
- 確度が、自社の実績と合っているか。そのステージに入って結果が出た案件のうち、受注した割合を出し、置いた確度と比べます。 ずれているなら、加重予測は確度を置いた人の見立ての合計でしかありません。
2つの差も点検に使えます。 コミットが加重予測を大きく上回るなら、根拠が担当者の中にしかない可能性があります。 「大きい」の線は、例えば目標の1割のように、会議の前に決めておきます。
計算例:加重予測1,545万円とコミット1,000万円、どちらで報告するか
案件が少なく大型案件に偏る期は、コミットを下限として報告し、大型案件は1件ずつ確かめます。5件の案件で比べます。
例5件の案件で、コミットと加重予測を比べる
ある四半期に、想定クローズ日が期内の案件が5件あり、受注済みはまだ0円とします。 確度は、アポ20%・提案済み45%・口頭合意80%で置いています。
- A社:口頭合意・600万円・コミット → 加重480万円
- B社:口頭合意・400万円・コミット → 加重320万円
- C社:提案済み・1,000万円・ベストケース → 加重450万円
- D社:提案済み・300万円・ベストケース → 加重135万円
- E社:アポ・800万円・パイプライン → 加重160万円
コミットは1,000万円、加重予測は1,545万円で、加重予測のほうが545万円高く出ています。 ただし加重予測の約29%(450万円)は、C社の1件です。 C社は取れれば1,000万円、落とせば0円で、450万円という中間の値にはなりません。
E社は、アポの段階の800万円に期内の日付が付いています。 確度は「そのステージから最終的に受注する割合」で、期内に閉じる確率ではありません。 加重予測は、この日付を疑わずに160万円を数えます。
数値は説明のための架空のものです。
C社が2割の線を超えるので、この期の加重予測は参考にとどめます。 報告は下限1,000万円を着地見込みとし、ベストケース込みの2,300万円を上振れとして添えます。 会議で決めるのは、C社をコミットに上げるのに足りない事実と、E社の日付の根拠です。
翌週からは、下限が動いた理由を新規・後ろ倒し・失注などに分けて確かめます。 分け方は着地見込みの変化分析で扱っています。
フォーキャストが外れる3つの失敗:楽観・サンドバッギング・直前の更新
予測が外れる原因は担当者の性格ではなく、楽観や保守が得になる仕組みです。典型は次の3つです。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 楽観:コミットと期内の日付が膨らみ、期末に崩れる | 外れが確定するのは期末で、それまで楽観に代償が無い。会議では前向きな数字が歓迎される | コミットに4つの事実の記録を求め、日付は先方の手続きの日程から引く。後ろ倒しを週ごとに数え、例えば2回ずれた案件は日付の根拠を確かめ直す |
| サンドバッギング:低く申告し、期末に「思わぬ受注」が出る | 外すと責められ、上回ると称賛される。高く出すと、次の期の目標が上がることもある | 目標の決め方を申告から切り離す。外したことではなく、事実を確かめずにコミットへ入れたことを問う |
| 直前の更新:数字が会議の前にだけ動き、止まった案件が期内の日付で残る | 予測を出す表が案件の記録と別にあり、二重入力になる。案件を閉じても得をする人がいない | 担当者が直すのはステージ・金額・想定クローズ日・次のアクションだけにし、予測はそこから組み立てる。止まった案件は週次で一覧にする |
3つとも、予測の数字がそのまま評価と会議の詰めにつながっていると起きます。 評価で見るのは、事実を確かめたか、変化を早く報告したか、理由を説明できたかにします。 低めの申告を記録から見分ける方法は、サンドバッギングの記事で扱っています。
明日から始めること:フォーキャストの精度を上げる5つの点検
最初に変えるのは、報告する数字の定義と、予測を人が打ち込む工程です。定義がそろわないうちに変化を分けても、理由の付け方が人によってずれます。
- 経営へ報告する数字を「下限(受注済み+コミット)」と「上振れ(ベストケース込み)」の2本に決めた
- コミットに入れる条件を、決裁者の合意・予算・発注の手続き・日付の4つの事実で書いて配った
- 担当者が直すのは案件の記録だけにし、予測を打ち込む表をやめた
- 週の基準時点(例えば月曜の正午)を決め、担当者はそれまでに今期の日付が付いた案件を点検することにした
- 週次の着地会議(フォーキャストコール)で、先週との差を新規・増額・減額・後ろ倒し・受注・失注・その他の動きに分けて話すことにした
期末は、合計の誤差ではなく2つの割合で振り返る
下限と着地の差が小さくても、楽観と保守が打ち消し合っただけのことがあります。 期初の記録を取り出し、次の2つを並べます。
コミットの実現率 = 期初のコミットのうち期内に受注した金額 ÷ 期初のコミット
低ければ、コミットが甘い(楽観)コミット外からの受注の割合 = 期初に案件にあり、コミットでなかったものの受注 ÷ 期内の受注
同じ担当者で何期も高ければ、申告が保守に偏っている「低い」「高い」の線は、自社の過去の期と比べて置きます。 精度の数字を担当者の評価に直接つなげると、低めの申告が増えます。