SaaSの更新管理とは?更新を「もう一度の商談」として逆算で進め、解約を防ぐ
SaaSの更新管理は、更新をもう一度の商談とみなし、解約通知の期限と先方の予算の時期から逆算して案件を立てることです。この記事の逆算表と計算例で、案件を立てる日と次期の金額、予測への載せ方を決められます。
SaaSの更新管理とは:更新を「もう一度の商談」として逆算で立てる
SaaSの更新管理とは、更新をもう一度の商談として、解約通知の期限と先方の予算の時期から逆算して進めることです。結果は、更新・増額・減額・解約のどれになったかと、その理由まで残します。
先方にとって更新は、続けるか・やめるか・条件を変えるかを決め直す購買の判断です。 予算は年度ごとに組み直され、決裁者は異動し、比べる相手も1年前とは変わっています。 だから終了日の直前に請求の準備と一緒に始めるのでは、打てる手が残りません。
案件を立てる日 = 解約通知の期限と予算の確定の、早いほう − 準備期間
準備期間は、利用状況の点検と、決裁者との振り返りの場を設けるのにかかる日数- 解約通知の期限:自動更新の契約では「終了日の◯か月前までに申し出が無ければ更新する」と定めることがあります。解約の申し出は、この期限の前に来ます。
- 予算の確定:次期に金額を上げるなら、その金額が先方の予算に入っている必要があります。固まった後の値上げは、先方の担当者に追加の稟議を強います。
成否は件数ではなく、金額の残り方で測る
件数で数えると、大口の契約の席が半分になっても見えません。 期内に終了日が来る契約のいまの年額の合計(更新対象額)を分母にして、2本で読みます。
グロスの維持率 = (更新対象額 − 解約 − 減額)÷ 更新対象額
増額を含めない。解約と減額でどれだけ減ったかを見るネットの維持率 = (更新対象額 − 解約 − 減額 + 増額)÷ 更新対象額
席の追加や改定による増額も含める顧客全体で測るNRRや解約率と考え方は同じで、ここでは期ごとの更新だけに絞ります。 ネットが100%を超えていても、グロスが下がっていれば、増額が解約と減額を覆い隠しています。
更新の進め方の型:終了日の120日前から、5つの節目で逆算する
解約通知の期限が終了日の60日前の契約なら、120日前に点検し、90日前に案件を立て、期限までに決裁者の意思を確かめます。
| 終了日から | やること | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 120日前 | 使われ方、導入の残り、先方との接点の数を点検する | 状態(良好・要注意・解約の恐れ)と、そう判断した事実 |
| 90日前 | 更新の案件を立て、決裁者との振り返りの場を次のアクションに置く | 案件の担当(1人)と想定クローズ日 |
| 75日前 | 振り返りの場で、導入時の目的に対する成果を先方と確かめ、次期の条件を示す | 先方が認めた成果と、次期の金額・期間 |
| 60日前 | 解約通知の期限。続ける意思を決裁者本人から確かめる | コミットに上げられるか |
| 30日前 | 稟議や発注の完了を確かめ、請求を準備する | 手続きの完了日 |
振り返りを金額の提示より先に置くのは、成果を先方の言葉で確かめた後なら、金額が「この成果に対していくらか」の話になるからです。 先方が成果を語れない契約は状態を下げ、導入と活用の手当てを先にします。 担当は契約ごとに1人に決め、カスタマーサクセスと営業で分けるなら受け渡しを日付で切ります。
更新の予測区分は、事実で読み替える
コミットの条件は、新規と同じ4つの事実(決裁者の合意・予算・発注の手続き・日付)です。 定義はフォーキャストカテゴリの決め方に合わせ、更新では次の3つを足します。
- 自動更新であることは根拠にならない。手続きの事実として数えるのは、解約通知の期限を過ぎたことです。
- 状態が「解約の恐れ」の契約は、ほかがそろってもコミットに入れない。
- 更新は新規と別の行で読む。混ぜると、大きな更新がコミットに入った期は、新規が薄くても目標に届いて見えます。
計算例:秋に終わる契約の値上げは、8か月前の1月に伝える
値上げを予定する契約では、起点が解約通知の期限から先方の予算の確定に移り、話を始める日が大きく前に出ます。
例年額1,200万円の契約を、次期に3%上げる
終了日は9月30日で、2か月前の7月31日までに申し出が無ければ自動で更新されます。 先方の年度は4月に始まり、その予算は2月に固まります。 次期は3%上げて、1,200万円 × 1.03 = 1,236万円にしたいとします。
10月からの費用は、4月に始まる年度の予算から出ます。 その予算が2月に固まるので、1,236万円を入れてもらうには1月中に伝えます。終了日から約8か月前です。
- 12月:利用状況を点検し、更新の案件を立てる。決裁者との振り返りの場を1月に置く
- 1月:振り返りの場で成果を確かめ、次期の金額を伝える
- 2月:予算に入ったかを、推進者に確かめる
- 7月:解約通知の期限までに、決裁者から続ける意思を確かめる
終了日の90日前(7月初め)に案件を立てていたら、値上げは固まった予算の外から出してもらう話になっていました。
数値は説明のための架空のものです。
先方の年度と予算の時期は、受注したときに聞いて契約の記録に残します。 更新の時期に聞いたのでは、この逆算は間に合いません。
次期の金額:指定は改定率より優先し、当てたら消す
次期の金額は、金額をそのまま指定するか、いまの金額に改定率を掛けるかで決めます。 両方あるときは指定を使います。指定はその契約で個別に合意した結果で、率は一般の規則だからです。
指定は当てたら消します。残すと翌期も同じ金額が当たり、改定率が効かないまま1年が過ぎます。 初年度だけ値引きした契約は、受注の日に2年目の金額を指定しておきます。
SaaSの更新管理でよくある失敗:自動更新への油断、など3つ
更新の失敗は、担当者の怠慢より、日付が来ても誰も動かない仕組みの隙間で起きます。よくある3つと、その直し方です。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 自動更新の契約に、終了日の直前まで声をかけない | 何もしなくても続くように見えるが、解約の申し出は期限の前に来る。気づいたときには先方の結論が出ている | 期限と予算の時期から逆算して案件を立て、期限の前に決裁者の意思を確かめる |
| 初年度の値引きが、そのまま続く | 2年目の金額を受注時に決めず、戻す話が更新の時期に初めて出る。先方の予算は値引き後の金額で組まれている | 値引きは2年目の金額と一緒に合意し、受注の日に次期の金額として指定する |
| 解約の理由が「予算」と「その他」ばかりになる | 聞き取りをせずに推測で書くと、角の立たない理由に寄る | 「予算が同じなら続けていたか」を聞き、主な理由を1つ選んで先方の言葉を添える |
解約と減額は、日付と理由がそろって初めて次に使える記録になります。 日付が無いとどの期の解約か決まらず、理由が無いと防げた解約だったのかが分かりません。
明日から始めること:契約を棚卸しし、更新の日を逆算する
最初に、動いている契約ごとに終了日・解約通知の期限・予算の時期・次期の金額の4つをそろえます。4つがそろえば、更新の案件を立てる日が決まります。
- 継続中のすべての契約に、終了日・解約通知の期限・先方の予算が固まる時期を入れた
- 更新の案件を立てる日を、期限と予算の確定の早いほうから逆算して決めた
- 更新の案件の担当を契約ごとに1人に決め、分業なら受け渡す日付も決めた(分業の境目の落とし穴)
- 初年度の値引きがある契約に、2年目の金額を指定した
- 解約と減額は日付と主な理由1つで残し、維持率はグロスとネットの2本で読むと決めた
案件ボードやフォーキャストと合わせた全体は、機能の紹介で見られます。