インサイドセールスの立ち上げ方:渡す基準と定義を先に決め、90日で型にする手順
インサイドセールスの立ち上げは、架電より先に、FSへ渡す基準と「話せた・アポ・商談化」の定義を決めることから始めます。この記事の手順と表で、最初の90日に何をどの順で進め、いつ何を測るかを決められます。
インサイドセールスの立ち上げとは:担う範囲と渡す基準を、架電より先に決めること
インサイドセールスの立ち上げとは、ISが担う範囲とFSへ渡す基準を決め、同じ定義で記録し、週次の振り返りで直せる状態をつくることです。インサイドセールス(IS)は、電話やメールで商談の機会をつくり、フィールドセールス(FS)へ渡す役割です。
範囲と基準を決めずに始めると、ISは何を取れば成果なのかが分からず、FSは何が渡ってくるのかが分かりません。 最初の1か月の数字が、人ごとに違う意味で積み上がります。 後から定義を変えると、その数字は比べられなくなります。
最初に決めるのは、担う範囲・渡す基準・受け取り方の3つ
- 担う範囲:問い合わせなどの反響に応えるのか、狙った企業へ新しく当たるのか。 前者をSDR、後者をBDRと呼び分けることもあります。最初はどちらか1つに絞ります。
- 渡す基準:どの状態になったらFSへ渡すか。FSが受け入れる条件を先に書いてもらい、ISが電話で確かめられる事実に写します。
- 受け取り方:誰が受け取り、いつ会うか。商談の日が決まっていないものは渡しません。
対象も、最初の90日は1つの業種・規模に絞ります。 対象が混ざると、率の差がリストのせいか話し方のせいかを切り分けられません。 分業の境目で案件が落ちる仕組みは、The Modelの課題と対策で扱っています。
最小限の定義:話せた・アポ・商談化を1文で書き、率の分母を1段前にそろえる
立ち上げで決める定義は、架電・話せた・アポ・商談化の4つと、それぞれの率の分母だけで足ります。項目を増やすより、この4つを全員が同じ意味で使うことを先にします。
| 言葉 | 定義(1文) | 率と分母 |
|---|---|---|
| 架電 | 電話をかけた1回。不在も担当者不明も1本と数える | 率の起点。メールやフォームは別に数える |
| 話せた | 担当者本人か、検討に関わる人と会話できた。受付で止まったものは含めない | 話せる率 = 話せた ÷ 架電 |
| アポ | 日時・会う人・目的を先方が承諾した、商談の予定 | アポ率 = アポ ÷ 話せた |
| 商談化 | FSが初回商談で受け入れ条件を確かめ、次の打ち合わせの日を置いた | 商談化率 = 商談化 ÷ 実施した初回商談 |
分母は、1段前の数にそろえます。 アポ率を、ある人は架電で割り、別の人は話せたで割ると、同じ名前の数字で比べられません。 架電からの通しの率が要るときは、「架電起点のアポ率」と呼び分けます。
ファネルは架電だけで数えます。 メールやフォームから取れたアポを混ぜると、話せる率もアポ率も意味を失うので、別に数えて別に並べます。
「受付で断られたら担当者不明」のように、迷う結果の振り分けも1文で配ります。 資料を送っただけのものはアポに数えず、次に連絡する日を置いて別に数えます。
最初の90日の手順:リスト→記録→基準→週次の振り返りの順に進める
90日は、リストを1本に絞り、記録の型を決め、最初のアポで渡す基準を確かめ、週次の振り返りで直す順に進めます。目標の数字は、実績が出てから置きます。
1〜2週目:リストを1本に絞る
対象の業種・規模と課題の仮説を1文で書き、その条件で1本のリストを作ります。既存の顧客と、連絡しないでと言われた相手は、配る前に外します。1週目から:記録の型を決める
結果は決まった選択肢で、架電のその場で残します。夕方にまとめて付けると、不在の記録から抜けていき、話せる率が実際より高く出ます。2〜4週目:渡す基準を確かめる
最初のアポを10件ほど、FSと一緒に振り返ります。受け入れなかった理由を選択肢で残し、基準を直すのは週次の場だけにします。項目と文例はトスアップの設計にまとめています。毎週:振り返りを同じ順番で回す
30分で、数(架電・話せた・アポ・商談化)→率→受け入れなかった理由→来週変える打ち手1つ、の順に見ます。打ち手を1つに絞ると、翌週に効いたかを確かめられます。5週目以降:目標を置く
最初の1か月の実績から話せる率とアポ率を置き、月のアポ目標から必要な架電数を割り戻します。式と切り上げる理由は必要架電数の逆算で扱っています。
1か月目と3か月目では、見る数字を変える
- 1か月目:記録の正しさ(その日のうちに付いているか、振り分けがそろっているか)と、架電数・話せる率。アポは件数が少なく、1件で率が大きく動くので判断に使いません。
- 2か月目:アポ率と、アポのうち商談が行われた割合(実施率)。
- 3か月目:FSが受け入れた商談の数と商談化率、受け入れなかった理由の内訳。ここで渡す基準と対象の条件を見直します。
よくある失敗:架電数だけで測る、渡した商談が放置される、など3つ
立ち上げの失敗は、ISの努力不足ではなく、測り方と渡し方の約束が無いことから起きます。よくある3つと、その直し方です。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| ISを架電数だけで測る | 立ち上げ直後は商談の成果が出ないので、数えやすい本数を目標にする。すぐ切る架電が増え、話せる率が落ちる | 架電数は下限にとどめる。1か月目は記録の正しさ、3か月目からはFSが受け入れた商談の数で見る |
| FSが渡された商談を後回しにする | FSの目標は受注なので、受注に近い手元の案件が先になる。初回商談の準備が薄くなり、判定も遅れる | 商談の日をFSの次のアクションに置き、受け入れの判定を商談の翌営業日までに記録してもらう |
| 日付の無いまま渡す | 電話の途中で日程を決めきれず「追って連絡」で渡す。FSは調整から始め、ISとFSが互いに相手を待つ | FSが週の初めに商談の枠を出し、ISはその枠の中で日時を決める。日付の無いものは渡さない |
2つ目と3つ目は同じ根から起きます。渡したあとに、誰がいつ動くかが決まっていないことです。 受け渡しは、商談の日がFSの次のアクションに入った時点で終わる、と決めておきます。
1つ目は、評価の軸を後から替えるほど揉めます。 立ち上げの時点で、評価の主な指標はFSが受け入れた商談の数だと決めておきます。 指標の組み方はインサイドセールスのKPIで扱っています。
明日から始めること:架電の前の1週間で決める5つ
架電を始める前の1週間で、範囲・基準・定義・記録・振り返りの5つを決め、1枚にまとめて配ります。完璧でなくてかまいません。3か月目の見直しで直す前提で書きます。
- ISが担う範囲(反響への対応か、新しい開拓か)と、最初の対象の業種・規模を1つに決めた
- FSに受け入れる条件を書いてもらい、ISが電話で確かめられる渡す基準に写した
- 架電・話せた・アポ・商談化を1文ずつ定義し、率の分母を1段前にそろえた
- 結果の選択肢と迷う結果の振り分けを配り、架電のその場で記録すると決めた
- 週次の振り返りの曜日と順番を決め、最初の1か月は目標を置かずに測ると決めた
1人目のISを置くときも、この5つは同じです。 人が増えてから定義をそろえ直すと、それまでの数字と比べられなくなります。 月のアポ目標と想定の率から必要な架電数を逆算し、実績と段ごとに並べる画面は、行動量の紹介で見られます。