トスアップとは?ISからFSへの引き継ぎを「基準・項目・商談の日」で設計する方法
トスアップ(ISからFSへの引き継ぎ)は、電話で確かめられる事実だけを基準にし、商談の日を決めてFSの次のアクションとして渡します。この記事の基準表とメモの例で、揉めない受け渡しを決められます。
トスアップとは:ISからFSへの引き継ぎを、基準・項目・商談の日で決める
トスアップとは、インサイドセールス(IS)が取ったアポを、フィールドセールス(FS)へ商談として引き継ぐことです。ISは電話やメールで商談の機会をつくり、FSは商談を担って受注まで進めます。 ISがどれだけアポを取っても、受け渡しで落ちれば売上になりません。
受け渡しの品質は、次の3つを決めているかで決まります。
- 渡す基準:どの状態なら渡すか。欠けると質の低いアポが流れ込み、FSがISを信用しなくなる。
- 引き継ぎ項目:何を書いて渡すか。欠けるとFSが同じ質問をやり直し、先方が「前にも話した」と感じる。
- 商談の日:いつ、誰の仕事として渡すか。欠けると次に誰が動くかが決まらず、案件が宙に浮く。
あわせて「商談化」の中身をそろえます。 ISはアポを渡した時点を、FSは追う価値を確かめた時点を思い浮かべがちです。 アポ獲得・商談実施・受け入れを別に数え、社内で商談化と言えば受け入れを指すと決めます。
商談化率 = 受け入れ ÷ 商談実施
実施率(実施 ÷ アポ)と分けて見ると、日程の問題か基準の問題かを区別できる受け入れとは、FSが初回商談で受け入れ条件を確かめ、次の打ち合わせの日を置いたことです。 率の測り方は商談化率の記事で扱っています。 海外ではISにあたる役割をSDRと呼ぶこともありますが、名前より定義の文をそろえます。
トスアップの基準:渡す条件は、ISが電話で確かめられる事実だけで書く
基準は2段に分け、ISが渡す条件には電話で確かめられる事実だけを入れます。予算や決裁の手続きは、数分の電話では確かめられません。 それを渡す条件に入れると、ISは確かめたことにして渡すか、アポを取らなくなります。
| 条件 | 満たす例 | 満たさない例 |
|---|---|---|
| 日時 | 「◯日14時から45分、オンラインで」と先方が承諾した | 「来週どこかで」「資料を見てから連絡する」 |
| 会う人 | 氏名・部署・役職と連絡先が分かっている | 「ご担当の方」としか分からない |
| 目的 | 話したいことを、先方の言葉で1つ言える | 「話を聞くだけなら」 |
| 対象 | 自社が決めた対象の条件(業種・規模など)に入る | 条件の外にある |
| 商談だという理解 | 導入の検討のための打ち合わせだと、先方が理解している | 「情報交換」「業界の話を聞きたい」 |
FSが初回商談で確かめる受け入れ条件は、課題・時期・次の日付の3つで足ります。 先方が自分の言葉で課題を語り、検討の時期とその理由が分かり、次の打ち合わせの日を先方と決めたら受け入れです。
予算と決裁は、どちらの条件にも入れません。 初回商談の時点では予算がまだ無いことが多く、それで断ると、これから予算を取りに行く案件まで捨てます。 予算と決裁はステージを進める条件で確かめます。
渡し方:商談の日を決め、必須6項目のメモを添えてFSへ渡す
商談の日が決まっていないものは渡さず、その日をFSの次のアクションにして、必須6項目のメモを添えます。日付の無いトスアップを受け取ったFSは、日程の調整から始めます。 ISは渡したつもりで、FSは会えるか分からない案件と見て、互いに相手を待ちます。
案件の担当は、渡した時点でFSにします。 ISの担当のままだと、FSの今日の仕事に商談が並ばず、自分の案件として準備しません。 アポを取ったISは担当とは別の欄に残し、その数え方はインサイドセールスのKPIで扱っています。
商談の日は、例えば「アポから2週間以内」のように上限を決めます。 守るには、FSが週の初めに翌週と翌々週の商談枠を出し、ISはその枠の中で日時を決めます。 枠が無いと、ISは電話の途中で「追って連絡します」と言うことになり、それが日付の無いトスアップの入口になります。
項目は「この欄が空なら、FSの準備が変わるか」で選びます。 必須は次の6つに絞り、時期・同席しそうな人・ISの所感などは任意にします。
例引き継ぎメモの例(必須6項目)
- 日時と形式:◯月◯日(火)14:00〜14:45、オンライン。先方が招待を送る。
- 会う人:営業企画部の課長。案件管理の見直しを任されている。決裁は部長。
- 経緯:3回目の架電で本人と話せた。会議前の集計の話で関心を示した。
- 課題(先方の言葉):「着地会議の前に、毎回半日かけて表を集計している」。
- 先方が知りたいこと:10名規模で使えるか、料金、今の表からの移し方。
- 伝えたこと・約束:FSの◯◯が伺うと伝えた。料金は当日に説明すると約束した。
約束を知らずにFSが「料金は後日」と言えば、先方はISとの約束を破られたと受け取ります。
数値は説明のための架空のものです。
「温度感:高」のような所感は、FSには確かめようがありません。 所感を書くなら、根拠の事実を先に書きます。 「先方が『年内に決めたい』と言った」と書けば、FSは商談の冒頭でその理由を聞けます。
よくある失敗:質の低いアポ・放置・ISの成果の消失の3つ
ISとFSの揉めごとは、個人の姿勢より、評価の数え方と渡し方の仕組みから起きます。よくある3つと、その直し方です。
| 失敗 | なぜ起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 数合わせの、質の低いアポが増える | ISの目標がアポ数だけで、受け入れの結果が評価に届かない | 受け入れ数を評価の主な軸にし、渡す条件は月の途中で動かさない |
| FSが受け取ったアポを放置する | 日付が無く、次に誰が動くかが決まっていない。初回商談は受注から遠く、後回しになる | 商談の日を必須にし、FSの次のアクションに置く。期限切れを週次で担当者ごとに見る |
| FSが会う前にアポを差し戻す | 「会っても難しそう」という見立てで断れるので、基準がFSの好みで動く | 差し戻せるのは、渡す条件を欠くときだけにする。見立ては会ってから受け入れ条件で判定する |
受け入れなかったときは、理由を選択肢で残します。 「課題が無い」「対象の外」「時期が遠い」「商談だと理解されていなかった」と分ければ、ISが直すところが1つに決まります。 判定は商談の翌営業日に確定させ、後から動かしません。
明日から始めること:日付の必須と、翌営業日の判定から
最初の週は「商談の日が無いものは渡さない」と「受け入れの判定を翌営業日に記録する」の2つだけで始めます。この2つで、放置と、理由の残らない不満の両方が減り始めます。 残りは4週間かけて足します。
- アポ獲得・商談実施・商談化(受け入れ)を、それぞれ1文で定義した
- 渡す条件を日時・会う人・目的・対象・商談だという理解の5つで書き、予算と決裁は入れなかった
- 商談の日が無いものは渡さず、渡した時点で担当をFSにし、商談の日をFSの次のアクションに置くと決めた
- 引き継ぎメモの必須6項目と、事実と所感を分けた文例を配った
- 受け入れの判定は翌営業日に理由の選択肢とともに記録し、後から動かさないと決めた
約束は両側に置きます。 ISは渡す条件と必須項目を守り、FSは受け取りから1営業日以内に記録を読み、商談の翌営業日に判定します。 ISは質を、FSは速さを約束すると、釣り合いが取れます。
営業リストのアプローチから案件化、トスアップまでの流れは、営業リストの紹介で見られます。